広島高等裁判所岡山支部 昭和53年(ラ)3号 決定 1978年8月03日
抗告人 黒田敏男
主文
原審判を取り消す。
本件を岡山家庭裁判所倉敷支部に差し戻す。
理由
一 抗告の趣旨及び理由は末尾添付の抗告状に記載されたとおりである。
二 当裁判所の判断
(一) 本件記録によれば、原審判別紙目録記載の各不動産につき服部俊彦は各三分の二の持分を有するところ、同人は昭和四四年三月三日死亡し、相続人のあることが明らかでないため、同四六年一月二九日相続財産管理人が選任され、相続人捜索の公告がなされたが催告期間満了日である同五一年一〇月一五日を経過するも相続権を主張する者がなく、相続人の不存在が確定したことが認められる。
(二) ところで共有持分権が特別縁故者への分与の対象となるかどうかについては、民法九五八条の三の規定と同法二五五条の規定の適用をめぐり争いのあるところであるが、前者の規定が後者の規定に優先して適用されるべきものと解するのが相当である。けだし、両規定とも相続人不存在による相続財産の国庫帰属の原則に対する例外を定めたものであるが、前者の規定は昭和三七年法律四〇号により、特別縁故者を保護する趣旨のもとに新設されたものであり、また共有持分だけを財産分与にあたり他の相続財産と区別して取り扱わねばならない合理的理由は存しないからである。
(三) そうすると原審判が共有持分は特別縁故者への分与の対象とならないとして抗告人の分与請求を却下したのは不当であり、本件抗告は理由があるので原審判は取り消しを免れない。
しかして抗告人が特別縁故者に該当するか否かについては、さらに家庭裁判所が審理を尽くしたうえ判断するのが相当であるからこれを原裁判所に差し戻すこととし、主文のとおり決定する。
(裁判長判事 加藤宏判事 喜多村治雄 下江一成)
抗告理由書<省略>